株式会社日本トリムと理化学研究所は、共同で電解水素水の飲用による抗ストレス効果に関する論文をオランダに本社を置くグローバル企業のElsevier社が発行する科学誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に投稿し、2021年1月8日に掲載されます。
本研究は日本トリムと理研との共同研究において、整水器から生成される電解水素水を事前飲用させたラットのストレス負荷に対する生体応答への影響を調べたもので、電解水素水の事前飲用により、ストレスにさらされた際の生体の酸化ストレスと炎症が抑制され、ストレスに対する耐性が強くなることが確認されたとのことです。
研究内容
(1)電解水素水の事前飲用は、浸水ストレスによる血液中の酸化ストレスマーカーの一つである酸化度(d-ROMs)の上昇を有意に抑制し(図1A)、抗酸化能の指標の一つである抗酸化力(BAP)の低下を防いだ(図1B)。また、電解水素水飲用群は抗酸化力/酸化度比(BAP/d-ROMs)も6.8±0.2から7.7±0.2へ上昇しており還元側へ有意にシフトしていた。

浸水ストレス:ラットを高さ2.2cmの水を張ったゲージに5日間おくことで与える慢性のストレス
d-ROMs:血中にある活性酸素やラジカルにより酸化された代謝産物であるヒドロペルオキシド(ROOH)量をはじめとしたトータルの過酸化物(酸化度)を反映している。
BAP:血中にある内因性及び外因性抗酸化物等の還元力(抗酸化力)を反映している。
(2)電解水素水の事前飲用は、浸水ストレスによる血液中の炎症マーカーの一つ(IL-1β)の上昇を有意に抑制した(図2)。

IL-1β:感染やストレスを受けた際に上昇する血中の初期炎症マーカー。
(3)電解水素水の事前飲用は、浸水ストレスによる血液中のストレス応答ホルモン濃度の変動を防いだ(図3)

ACTH: 主に脳下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン
Corticosterone: 副腎皮質で合成される副腎皮質ホルモンのうち、21炭素のステロイド系ホルモンである。
いずれのホルモンもストレスにより分泌されるホルモンで、ストレスの状況により増えたり減ったり変動する。持続的ストレスの場合はネガティブフィードバック調整を受け上下しやすい。
結論
電解水素水を事前飲用しておくことで、ストレス環境下に置かれても、電解水素水の抗酸化作用と抗炎症作用によりストレス応答が緩和される。つまりストレス耐性を強くすることが示唆された。
研究方法
実験用ラットを電解水素水飲用群または対照水飲用群の2つに分け1週間自由に飲水させた。その後、高さ2.2cmの水を張ったゲージに5日間おくことで慢性ストレスを与えた。その5日間は、自由飲水と一定量の強制飲水をした。持続的ストレスの前後で血中の酸化ストレスマーカー、抗酸化ストレスマーカー、炎症マーカー、ストレス応答ホルモン濃度の変化を調べた。
今後の期待
本研究により、飲み水を、水道蛇口に接続した整水器から生成される電解水素水に替えるだけで、ストレス耐性を強くできる可能性が示された。このことは生活習慣化しやすいソリューション(解決策)の一つになることが期待される。今後ヒトでの検証も期待される。
研究支援
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金No.JP16K16586、No.JP17H02172および株式会社日本トリムによる研究費の支援により行われた。
論文概要
「Alleviation of the chronic stress response attributed to the antioxidant and anti-inflammatory effects of electrolyzed hydrogen water」
(和訳:電解水素水の抗酸化および抗炎症効果による慢性ストレス応答の緩和)
主な共同研究関係者
研究代表者:理化学研究所 生命機能科学研究センター チームリーダー 渡辺 恭良 医学博士
共同研究者:理化学研究所 生命機能科学研究センター チームリーダー 崔 翼龍 理学博士
共同研究者:理化学研究所 生命機能科学研究センター 研究員 胡 迪 医学博士
共同研究者:株式会社日本トリム MD室 室長 樺山 繁 博士(農学)
掲載先
Biochemical and Biophysical Research Communications誌:
▼オープンアクセス論文のため下記よりご覧いただけます(英語サイト)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X20322129